光の街とわたし

フランス・リヨンでの留学生活

リヨン・CROUSの寮の前で学生が焼身自殺を図るー原因は奨学金、デモに発展中の事件を解説

Bonjour! みなさん、こんにちは。さきです。

今日はかなり真面目なお話。リヨンで起きた焼身自殺についてです。

先日、11月8日金曜日、フランス時間15時ごろ、リヨンの7区でリヨン第二大学の学生が寮の前で焼身自殺を図りました。学生は22歳の男性で、リヨンより西側に位置するサン=テティエンヌ出身。CROUSというフランスの大学生協のような組合が運営する寮の前で自らガソリンを被り火をつけたそうです。体の90%が焼け、生と死の狭間にいる状況です。

この男性が自殺した理由は、彼の生活が苦しかったためです。彼は現在、留年し、3回めの大学2年生の生活を送っていたそうです。留年して、3回めの2年生なんて日本人からすると怠けているように見えるかもしれませんが、フランスの大学は日本の大学より卒業することがかなり大変なのです。

まず、日本では大学入試があり、合格した大学に入学した後、設定された単位を取ることで卒業ができます。4年間で基準の単位を取ることが目標ですから、4年生以外留年というものはありません。

しかし、フランスではバカロレアという大学に入るための資格が取れさえすればどこの大学にも入ることができます。日本でパリのソルボンヌ大学と聞けば頭がいいと思いがちですが、実はバカロレアさえあれば誰でも入れる大学なのです。ただ、誰でも入れるからこそ大学でも試験がかなり厳しいです。フランスではLicence1〜3(修士課程)がありますが、これをひとつずつ進級するのに、学年末テストがあります。これに合格するのがかなり大変で、学生の約半分はこれに落ちます。卒業までにたどり着くのはより難易度が増し、20%ということもあります。皆それまでに学部を変更したり、退学したりするのです。

今回、自殺を図った学生が留年しているのは、彼の怠けではなく、勉強をしての結果です。

 

そして、この学生が自殺を図る前に投稿したFacebookの内容が話題になり、フランス全体で問題となっています。

それは、留年し、勉強を頑張っている状態で、CROUSから月450€の奨学金しかもらえないという状況を赤裸々に語ったものでした。450€は日本円で54000円ほど。家族からの仕送りがないと考えると1ヶ月この額で生活していくことはかなりしんどいと思います。家賃で半分以上使うことになりますし、物価の高いフランスではかなり厳しい生活になると思います。外食は絶対にできません。私の友人は日本の奨学金で月8万円ほどもらっていますから、それを考えるとより厳しさがわかります。

 

この事件を受けて、世間のCROUSに対する批判が強まり、12日火曜日にはCROUSの前で多くの人が抗議活動を行ないました。

また、Twitterでは#LaPrecariteTue (不安定を殺す)というハッシュタグで自身も苦しい学生生活を送っていることを告白する人が多く現れています。1日に食べるために1€しか使うことのできない学生や、今回自殺を図った学生よりも少ない奨学金しかもらえない学生など、フランスの貧しい学生生活の様子が浮き彫りとなっています。

 

バカロレアを取ることができれば大学には誰でも行くことができ、授業料も無料であることから、フランスでは多くの人が大学に行きますが、勉強がハードであり、留年すると収入を得ることができない期間が長くなるわけですから生活が厳しくなります。

フランスは学歴社会です。大学よりもより専門的で賢い、グランゼコールという特別な高等教育機関もあるくらいです。そのため、大学に行かないという選択肢は未来の可能性を狭めてしまうことになります。

今回、自殺を図った学生は、日々、努力をしているのに報われない悔しさがあったのかと思います。彼はFacebookの投稿で差別を生み出す自由主義に反対する書き、マクロン、オランド、サルコジを恨むとも書いています。かなり追い詰められていたのかと思います。

 

日本からフランスを見ると、パリの華やかなイメージ、綺麗な街並み、地中海側の美しい景色や豊かな生活を思い浮かべると思いますが、そのヨーロッパの先進国で浮き彫りとなった学生の貧困はこれからより議論に発展していくと思います。

 

リヨンで起きた学生に関するニュースだったため、自分の中でも衝撃で今回ブログに書かせていただきました。

学生やその他先進国に隠れている貧困問題は日本も例外ではないと思います。このような現実には目を背けがちで、このような事件が起こることで注目を浴びることは悲しいことですよね。ただ、このような貧困は自殺を図った学生が反対した自由主義にはつきもので、それを裕福な人たちが目を背けずに支援していくことでしか解決はできないですよね。自分のことばかり考えてしまいがちですが、自分のより裕福な生活よりも命の方が絶対に大切です。私は、国際関係を学んでいるということもあり、発展途上国の貧困に目を向けがちですが、日本やフランスといった先進国での貧困という世の中に埋もれがちな課題にこれからもっと目をむけ、援助することも考えていこうと思いました。

 

みなさんも、このブログをきっかけにこの問題について考えていただければと思います。

では、今日はここら辺で。

Au revoir!

 

さき

 

 

【今回、参考にしたフランスの記事】

Lyon | Étudiant stéphanois immolé par le feu à Lyon: «C’est un symbole»

Immolation à Lyon : étudiants et enseignants sous le choc

https://www.ouest-france.fr/societe/faits-divers/etudiant-immole-lyon-qui-est-anas-le-jeune-homme-dont-le-geste-est-l-origine-de-la-colere-sur-les-6606640