光の街とわたし

フランス・リヨンでの留学生活

フランスで発生した大規模ストライキ:原因や今後の展開は?フランス留学中の大学生が現状を伝えます

Bonjour! みなさん、こんにちは。

今日は2019年12月5日木曜日からフランス全土で行われている大規模ストライキについてお話ししようと思います。

 

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Photo by ev on Unsplash



私は現在フランス南東部の都市、リヨンに留学中です。

リヨンでもこの木曜日に大規模なストライキと共にデモが行われました。

リヨンでは現在12月5日から8日までLa Fête des Lumières(光の祭典)という街全体をイリュミネーションで彩る大規模なお祭りが開かれており、多くの人がフランス全土から訪れるタイミングでストライキとなったため心配していましたが、大部分は問題無く、お祭りも予定どおり行われました。

 

このストライキは以前から予告されていたもので、フランス全土で行われています。一部では暴徒化する集団も現れ、警察が鎮圧を行うなど過激な様子が日本でも報道されたかと思われます。今回、ストライキが発生している原因や今後の展開について今日は説明していこうと思います。

では、On y va! 

 

 

今回のストライキの規模

フランスでは日本よりも頻繁にストライキ(grève )が発生します。

フランスの国鉄であるSNCFなどはよくストライキを行うため、フランスの新幹線であるTGVが運行停止になることもしばしば。観光客にも大きな影響を及ぼしています。

ただ、今回のストライキは規模が違います。私のようにフランスに在住している日本人に大使館から事前に注意喚起のメールが届く規模のものです。そのメールによると、ストライキはフランス全土で行われており、参加している企業や団体はSNCFだけでなく、パリの地下鉄を運行しているPATPやフランス航空業界の大手であるエールフランスや一部の空港管制塔などの参加により、多くの公共交通機関が麻痺することになりました。また、警察や消防、病院、役所、郵便局、電力会社、教育機関運送業などもストライキに参加。

この5日にストライキに参加した人の数は内務省の発表では80万6000人。一方、フランス労働総同盟(CGT)は150万人と発表しています。

これだけの人が参加したこともあり、経済的なダメージがかなり出たようです。

 

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フランス大使館からの注意喚起メール

さすがに、ストライキに参加を表明した機関の一部は稼働し、緊急事態には動けるようになっていますが、大規模なこともあり、人々の日常生活に支障をきたしている今回のストライキです。一部では無期限のストライキをする団体もあり、経済的な影響はますます強まりそうです。

 

ストライキの原因:年金改革

では、なぜ今回のストライキが起きているのでしょうか。

その原因はマクロン政権が行う年金改革にあります。

現在、フランスの年金制度は職業によって計算方法が違う仕組みになっています。

例えば、一般企業の社員の場合、もっとも稼いだ25年間の給与の平均を基準に年金の受給額を決めますが、公務員の場合は退職の6ヶ月前の給与の平均を元に計算を行います。

このように職業によってそれぞれ違うややこしい年金制度を一本化しようというのが今回マクロン政権によって打ち出されている年金改革です。

2019年9月12日にエドワード・フィリップ首相が2020年の夏までに年金改革を目指すと発表しました。今回の年金改革はいくつもある年金制度を一本化し、ポイント制にするというものです。

しかし、これにより、今までよりももらえる額が少なくなるのが公務員であり、それに反発した公務員たちが今回のストライキを起こしました。

また、この年金改革によって退職年齢が遅くなり、働く期間が長くなることも国民の不満を煽り、ストライキへとつながりました。

 

ストライキが大規模化した理由:マクロン政権

今回のストライキの大きな原因は年金改革ですが、ここまでストライキが大規模化したのには別の理由があります。

それはマクロン政権が進める改革への反対です。

現在のマクロン大統領(エマニュエル・マクロン氏)は2017年5月の大統領選で66.1%の得票数を獲得し、国民戦線(現・国民連合)の党首であるマリーヌ・ル・ペンを破り大統領になりました。39歳というフランスの歴史上もっとも若い大統領の誕生は大いに話題となりました。

選挙の際、彼は労働改革や教育改革といった様々な改革を掲げました。それが支持され、大統領の座についたのですが、現在ではその改革が彼を批判する理由になっています。

マクロン政権は改革が国民に負担をかけることを考え、政策をなるべく手速く、スピーディーに行なっているが、それが反対に国民の意見を聞いていないといった批判に発展。また、自国の企業が海外進出しやすくするための法人税の引き下げや、温暖化対策として燃料税を引き上げようとしたことが富裕層の味方であるという批判をうけています。

燃料税の増税は黄色いベスト運動に発展し、一年に渡ってこの抗議は続いています。

saki-juillet.hateblo.jp

このような黄色いベスト運動に参加している人々や、マクロン政権に不満のある国民が今回のストライキに加わってデモ行進を行ったことによりデモは大規模化しました。

 また、奨学金が低いことで学生が焼身自殺を図った事件をきっかけに抗議活動を行なっていた学生たちも今回のデモに加わり、抗議を行いました。

saki-juillet.hateblo.jp

このほかの制度改革を訴える人々がデモに参加。

このように幅広い年代層がデモに参加したことでフランス全土で80万人もの人が参加するものになりました。

 デモが拡大した理由の動画(フランス語です)

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ストライキの様子

この5日にはフランス全土でストライキが行われました。

パリでは地下鉄を運営するPATPが運行を停止したことにより交通網が失われたほか、中心部で大規模なデモ行進が行われ、一部ではこのストライキに便乗し暴徒化する人々も現れるなど混乱が起こりました。

パリのレピュブリック広場やナシオン広場では暴動が発生し、鎮圧部隊が出動する舌位に。第二の都市リヨンでも多くの人が参加し、一部は暴徒化。その他ボルドーアヴィニョンといった都市でもデモ行進が行われました。

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動画では12月5日のストライキの様子を伝えています。

公務員だけでなく、学生や黄色いベスト運動に参加する人々もこのストライキに参加していることがこの動画でわかります。人々はマクロン大統領やフィリップ首相、その他官僚を「破壊者」と批判したり、彼らの人形を破壊するなどしています。

このストライキによりルーブル美術館では一部の展示を閉鎖、エッフェル塔は完全に閉鎖されるなどパリの観光業にも影響を与えました。

5日以降もPATPは一部の路線を除いて運行を停止しています。地下鉄が動かないことにより、一部の動いている地下鉄には人が殺到。危険な状態となりました。また、通常に比べ車の数が増え、渋滞が発生するなど混乱は続いています。

 

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2つ目のビデオは記者の女性が会社へ行く時の様子を記録したもので、メトロの駅は閉まり、バスは混雑、電動スクーターや自転車がなかなか使えない様子を伝えています。最終的に会社につくのに1時間半以上かかっています。

 

私も今回のストライキの様子を目にしました。

買い物に行こうと家を出た時に、家の前の道路が封鎖され、歩行者天国のようになっており、そこで人々が集まって抗議活動を行なっていました。朝の10時ごろでこれから本格的に始めるという様子でした。5日はかなり寒く、私が家を出た時は0度から1度ほど。しかし、多くの人が寒さに負けず集まっていることに驚きでした。

 

私が住んでいる都市のリヨンではお祭りがあることもあり、メトロは運休せず通常どおり動いていましたが、中心部では暴れる人も出るなど混乱が起こったようです。

また、私が通っている大学も当初は授業を行う予定でしたが、大学内での抗議活動などがあり、閉鎖となりました。

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ストライキの様子(筆写撮影)

 

今後の展開

5日に最も大規模なストライキが発生しましたが、現在もストライキは続き、パリのメトロは運行を停止したままです。

また、本日10日にもデモが呼びかけられており、暴動に発展する恐れもあることから注意が必要です。

観光をする際は、時間に余裕をもち、落ち着いて行動することが必要です。また、危険だと思ったところには近づかないようにしてください。

 

8日夜にマクロン大統領と閣僚らが集まり、年金改革について話し合う会合が開かれました。ストライキを行なっている団体は年金改革を破棄することを求めていることから、今後の政府の対応によってはストライキが長引くことが懸念されます。

 

年金改革はマクロン大統領が選挙戦当時から掲げてきた改革であり、これをすぐに破棄することは考えづらいです。今後のフランス政治に注目です。